>図書司書おがわより、この本いかがですか? >『明治のナイチンゲール 大関和物語』 田中ひかる/著 中央公論新社 2023年

『明治のナイチンゲール 大関和物語』 田中ひかる/著 中央公論新社 2023年

今回のおすすめは「明治のナイチンゲール 大関和(おおぜきちか)物語」です。

 

日本の近代看護の草創期に大きく関わった女性、大関和(1858~1932)の生涯が書かれています。

2026年春から放送予定のNHK朝の連続テレビ小説「風、薫る」の主人公のモチーフに選ばれました。

専門的な看護教育を最初に受けた日本人の一人となる

明治時代初め頃の日本では、看護という考えはなく、お金をもらって病人や兵士の看病をする卑しい職業だという観念しかありませんでした。また、女性が高等教育を受けたり、働くことにも白い眼が向けられる時代でした。どのようにして看護が根付いていったのか、大関和の激動の人生と共に知ることができます。

明治維新で日本に新しい価値観が入り、女性の生き方にも影響した

大関和は現在の栃木県の国家老の娘として生まれていますので、武家の教育を受けた誇り高い女性だったと想像できます。その女性がなぜ偏見があった看護の道を選び、職業としたのか、興味深く読めます。

弱い立場の人のために奔走し、看護の質の向上を目指した

赤十字国際委員会が創設した「ナイチンゲール記章」への推薦も断ったという、名誉やお金にはこだわらずに生きた人であったため、今あまり名前が知られていないのかもしれません。その訃報が新聞に載るほどの人物であった大関和について知ってほしいです。

まとめ

大関和と看護学校同期として鈴木雅という女性についても書かれており、ともに後進を育て、励まし合った仲間がいたことがわかります。困難を乗り越えて、日本での看護の擁立に尽力した人々がいたことを忘れてはならないと思いました。

コスモス